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No.1 - No.12
No.13 「全体照明」と「タスク照明」
No.14 「間接暖房」のぬくもり
No.15 DIYは修理ではなく、「投資」である
No.16 風除室の役割
No.17 大邸宅の大問題
No.18 香りで快適さを演出
No.19 観葉植物もチェックポイントです
No.20 箱の積み重ね?Habitat 67

 

No.13

  

 

 「全体照明」と「タスク照明」

 照明には大きく分けて2種類あります。「全体照明」と「タスク照明」です。 「全体照明」はその名の通り、全体をまんべんなく照らすものです。その場を一様に明るくするためのもので、 玄関や廊下のようなところに使われます。 一方、「タスク照明」はある特定な役割(タスク)のある灯りです。 キッチンカウンターの上に設置されるランプが、その一例。それは、炊事を円滑にするという役割を担っています。

 カナダの住まいには、全体照明よりもタスク照明が多く取り入れられています。 リビングルームのようなオープンスペースも天井にひとつ全体照明を付ける代わりに、 家具でまとめた各コーナーに最も適した「タスク照明」が配置されます。

 ダイニングテーブルの上のランプは食事の雰囲気を盛り上げるためのもの。ソファの横のランプは読書用。 また観葉植物を照らすランプは発育を助けると共に緑を鮮やかにするためのもの。 ウオールウオッシャーといわれる壁の間接照明ランプは、自慢の壁に光の洪水を浴びせてインテリアのアクセントにするためのものです。

 それぞれの照明にはそれぞれの仕事があり、その仕事を命じるのは住む人です。 照明を上手に使いこなす人の家では、明かりが生きて見えます。 室内のみならず屋外の玄関回り、外壁、庭等も美しく効果的にライトアップされますから、夜の散歩も楽しくなります。

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No.14

  

 

 「間接暖房」のぬくもり

照明に直接照明と間接照明があるように、暖房にも「直接暖房」と「間接暖房」があります。 「直接暖房」の代表は、石油ストーブやこたつ。有効に暖をとる事ができますが、その反面、暖房が当たっている体の一部しか暖まりません。 温風を人間に直接吹き掛けるエアコンも、頭は熱くなりますが、足が冷えて困る事が度々です。

一方、「間接暖房」は直接人を暖めるのではなく、部屋から寒気をシャットアウトすることにより、間接的に人を暖める方法です。 カナダの家は、断熱効果の優れた工法で作られていますが、やはり窓ガラスはその中で一番外の寒気の影響を受けやすい場所です。 そのため暖房機器は窓下の位置に取り付けられ、窓から伝わる冷たい空気を暖めます。 せっかくの暖かい空気を冷ましてしまうのはもったいない気がします。 しかし、新しい乾いた空気を窓ガラスの表面に送り続ける事で、窓ガラスの表面に生じる結露を常に乾かしています。 結果として、部屋全体がぽかぽかと暖かくなるのです。

カナダにも暖炉のような直接暖房もありますが、実用よりエンターテインメントの道具として扱われ、暖房の主役ではありません。 照明でもカナダ人は「間接照明」を上手に使いますが、暖房も「間接暖房」をうまく用いています。 「間接暖房」には「間接照明」に似た、直接的ではないが包み込むような、やわらかな「あたたかみ」や「ぬくもり」があります。

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No.15

  

 

DIYは修理ではなく、「投資」である

カナダではDIYが盛んです。それは「日曜大工」という枠を超え、家の内側や外側にも手を加えるほどです。 そう書くと、「なるほど、カナダ人は自分の家の修理までするんですね」と感心する人がいますが、実は少し違います。

故障して手に負えなくなってから、何とかしようとするのがリペア。こうなると専門家を呼ぶしかありません。 カナダの人達はそうなる前に、つまりどこもまだ故障していないうちから、自分の気分や時代にマッチしている新しい物へと、 交換していくのです。修理ではなく今の状態をより良くするのがこちらのメンテナンスであり、重要なホビーとして理解されています。

ウイークエンドのDIYセンターは、次に何をしようかと流行をチェックする人で大にぎわい。 店側も商品を売るのと同様に、アイデアの提供や取り付け方法の説明のためのスタッフを充実させます。 このように始終家の内外がグレードアップされていきますから、既存住宅の価値が年を重ねる程高くなります。

メンテのいい家は、新築の家より高く売買されます。 最初は内装、外装ともにスタンダードタイプの手ごろな値段の家も、手を加えられてハイグレードタイプに変身するからです。

DIYは自分の好みに合わせながら、マイペースで持ち家をグレードアップさせる投資なのです。

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No.16

  

 

風除室の役割

玄関を入れば、いきなりリビング。それが欧米のスタイルです。玄関は外と内との境界。 そこから一歩入れば、もう家族の場なのです。

しかしここカナダの冬は長く厳しい。そこで玄関とリビングの間に小さな空間をつくり、もうひとつのドアで仕切ります。 外のドアを開けても、冷い空気をここで止め、暖房費がかさまないようにとの工夫です。

風除室と呼ばれるこの空間のドアには、よくガラス入りのドアが用いられます。 ガラス越しにほのかにもれてくる家の明かりは、レースのカーテンの優しさと相まってその家の住人の雰囲気がたそかれ時に伝わってきます

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No.17

  

 

大邸宅の大問題

カナダがイギリスから独立し、連邦国家となったのは1867年。ちなみに1967年のモントリオール万博はその100年祭にあたりました。

19世紀後半の北アメリカの都市部は、イギリスから独立したばかりのアメリカと現在のモントリオール、オタワ近辺のみでした。 モントリオールは北米商業の中心地として栄えました。一握りの実業家により、当時の富の70%が牛耳られていました。 彼らはアイルランドやスコットランドの移民で、無一文から一代で富を築き上げた立志伝中の人たちです。

写真のこの家はその一人のお屋敷で、戦後相続税捻出(ねんしゅつ)の為に売りに出したのですが、大きすぎて買い手がつかず、 真ん中の部屋を上下切り落として2軒のお屋敷にし、やっと売れたという由来の家です。

今なお、近隣の高級住宅のなかでひときわ目立っていますから、元のお屋敷は、日本の平均住宅がいくつ入るでしょうか? 家の前にある高級外車から、その大きさを想像してください!

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No.18

  

 

香りで快適さを演出

デパート、ブティック、クリニックといった人の集まる空間では、アロマテラピー(匂いの心理学)も空調設備の設計の一環として検討されます。 匂いは、人の行動を左右する重要な要素だからです。

住宅のショールームも、例外ではありません。購買者が落ち着いた、アットホームなムードになるように、空調に甘い香りを仕込むのです。 家具のショールームでは「憩」のなごやかさを、芝の香りで物語っていました。

カナダでもアロマテラピーは静かなブームを呼び、香りのキャンドルやポプリなど広く人々に愛用されています。 2002/5/9 初出

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No.19

  

外まわりにも工夫を凝らした住宅の一例。              和の雰囲気をかもし出したダイニングテーブルの様子

 

観葉植物もチェックポイントです

住宅展示場を見てまわる時に、モデルルームをどのようにアレンジしているかを観察するのもおもしろいものです。ダイニングテーブルやソファを置いて空間演出をするのは普通ですが、生き生きとした元気な観葉植物や、鉢植えの花を見つけると心温まります。玄関、庭先の花や植木、キッチンやトイレ、またリビングルームに置かれた鉢植えやプラントは、箱を売るだけでなく、箱の中身の生活を考慮している会社がつくった家である事を教えてくれます。

鉢植えの緑は、住む人の心を和ませます。住まいのなかでテレビやピアノと同様に、置く場所を必要とする大切なインテリアの要素です。「外構は別ですから」と外まわりを裸の土盛りのままにしたり、オプションのグレードアップ用の資料だけをテーブルやカウンターの上に置いてあるモデルハウスよりも、観葉植物にまで気遣うところのほうが、信用できそうですね。

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No.20

箱の積み重ね?Habitat 67

1967年モントリオール世界万博の際に建てられた箱式ドライ工法のマンションだ。当時はユニット形式のコンセプトが考案され始めていた時期で、マギル大学建築科学生であったモッシュ・サフディ氏が考案した。

工場でプレハブされたキューブを現場に運び積み重ねる事により施工現場でのコンクリート打ち込み作業を必要としない新しいコンセプトとして注目を浴びた。これを機にサフディ氏は世界的建築家として飛躍した。

各戸は幾つかのユニットを使い、窓開口が多いにも係わらず、隣のユニットとは視線が合わない様に計画されている。河側のユニットからは、広々としたセントローレンスの流れを楽しめる最高の住まいです!

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